手術用手袋再利用で中皮腫 労災に

産婦人科の診療所で働いていた准看護師の女性が、がんの一種、「中皮腫」になったのは、手術用のゴム手袋を再利用するのに使っていた粉末にアスベストが含まれていたためだと訴え、国から初めて労災の認定を受けていたことが分かりました。

手術用の手袋の再利用は、かつて医療現場で広く行われていたということで専門家は、注意を呼びかけています。

労災が認められたのは、山口県に住む准看護師の河村三枝さん(52)です。
おととし、「中皮腫」と診断され、手術ができないほど進行していたため、現在は、痛み止めの薬で治療を続けています。
河村さんは、昭和61年まで働いていた産婦人科の診療所で、出産の際などに使った手術用のゴム手袋を再利用するため「タルク」という粉末をまぶす作業をしていました。

中皮腫と診断されたあと、タルクには、アスベストを含んだものがあったと知らされ、労災を申請したということで、ことし7月、国から労災が認定されました。

医療従事者がこの作業でアスベストを吸い込み労災を認定されたのは初めてで、専門家は、手術用の手袋の再利用は、かつて広く行われていたことから注意を呼びかけています。

河村さんは「自分のように健康被害を受けた医療従事者はほかにもいるのではないか。自分の労災認定が、少しでも救済に役立てばと思う」と話しています。

アスベスト含有、あまり知られず”
アスベスト問題に詳しい東洋大学大学院の神山宣彦客員教授は「タルクに含まれるアスベストがきちんと管理されるようになったのは昭和62年以降で、それまでは不純物として含まれていること自体、あまり知られていなかった。かつて同様の作業をして不安を感じる方は、健康診断を積極的に受けるなど早期発見に心がけてほしい」と話しています。


ゴム手袋ねえ。最近はすべてビニール手袋になりましたが、器械出し、つまり、手術に際し、医師の手伝いをする看護師は丈夫なゴム手袋を好んだようです。また、医師の中にもゴム手袋の方が良いという人も多くいました。

別の話ですが、院生時代、バイトに行った病院では、その時もゴム手袋でしたし、「ガラス製の注射器」でした。さすがに針は使い捨てでしたけど。ガラス製の注射器・・・あれは滑りが非常に良くて使い勝手が良いのですが衛生面でどうなんだろうとは思いますね。オートクレーブでも死なない病原体もいますし。

研修医時代、何度かピンチヒッター的に看護師さんに代わって器械出しをしたことはありますが、その時は確かにゴム手袋をしました。様々な器械やガーゼなどを手渡す時間が遅れると「遅い!」といって蹴りが入るという、単なるしごき熱心な指導を十分受けたものです。

あと、私の母校では解剖学実習を、第一、第二の二つの研究室が交互に行うのですが、私の時は第二解剖学。実習にも研究室のルールがあって、

第一:帽子、手袋、マスク、白衣はすべて着用。遅ければ何時まで残ってやってもいいし、土日なども自主的に行って良い。

第二:白衣のみ(遺体は汚いものではなく、完全防備は失礼に当たる)。制限時間内しか解剖が出来ない。作業が遅れると減点処分になる。

とゆーことで、私は素手でご遺体を解剖しました。勿論ホルマリン漬けになっておりましたので、ホルマリンも十分素手で触ったことになります。何十年後かにホルマリンで手に障害が起こってもしらないぞ、って、人ごとですな。今のところ問題ないので大丈夫だと思うことにしましょう。

最近は手術用のゴム手袋はほとんど絶滅か、あっても使い捨てのものです。

中皮腫の原因は確かにアスベストが一因ではありますが、原因のすべてではないというのもあります。たばこをバカスカ吸っても肺癌にならない人もいれば、生まれて一本も吸わないのに肺癌になる人もいる。癌のメカニズムってのは本当によくわからないのです。

ただ、今回の場合、業務に起因する疾病、ということで労災認定されたのでしょう。労働基準法も結構頻繁に変わりますが(最近の労災はメンタルな部分にシフトしつつありますが)当時危険とはわからなかったことで、後にわかったことでも、やはり労災の対象になるってことですね。こわいこわい。